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井上哲次郎

井上哲次郎

1856194488歳)

筑前国太宰府(現・福岡県)の医師の家に生まれ、1877年に東京大学に入学して哲学・政治学を専攻、フェノロサや中村正直らに学んだ。1880年卒業後、外山正一・矢田部良吉との共著で近代日本初の新体詩集『新体詩抄』を刊行する一方、日本最初の哲学辞典『哲学字彙』(1881年)の編纂を担い、西洋哲学の体系的な日本語化に先鞭をつけた。1882年に東京大学助教授となり、翌1884年にドイツへ留学してハイデルベルク・ライプツィヒ・ベルリン各大学でドイツ観念論哲学を修めた。

1890年の帰国後、帝国大学文学部哲学科教授となり、日本人として初めて西洋哲学を正規講義した。カント哲学に由来するドイツ語Persönlichkeitおよび英語personalityの訳語として「人格」を整備し、哲学・倫理学の基礎概念として定着させた。また「絶対」「現象」「意識」「直観」など多数の哲学用語の日本語化にも関与し、近代哲学語彙の体系化に貢献した。

著書に『日本陽明学派之哲学』(1900年)、『国民道徳概論』(1912年)などがあり、儒教的国民道徳論の構築と普及にも力を注いだ。国粋主義的・天皇制擁護の立場から内村鑑三不敬事件を批判するなど明治の思想界に大きな影響を与えた一方、西洋哲学の移植と日本化という両面を橋渡しした人物として評価されている。

8訳語数
英語 / ドイツ語 / フランス語翻訳元言語
1881年頃訳語年代

分野別訳語数

哲学8

訳語一覧8

人格哲学
personality / Persönlichkeit
英語・ドイツ語明治期井上哲次郎
「人」(ひと・人間)と「格」(等級・資格・地位・品位)を組み合わせた漢語で、「人間としての格・品位・道徳的資格」を意味する。英語personalityはラテン語persona(仮面・役柄・人格)に、ドイツ語Persönlichkeitも同語源に由来する。
徳性哲学
virtue
英語・フランス語明治期井上哲次郎
「徳」(道徳的な卓越性・善き品性)と「性」(生まれながらの本性・本質)を組み合わせた漢語。朱子学の『中庸』に見える「尊徳性」(徳の本性を尊ぶ)に由来し、天から賦与された道徳的本性を意味する。英語 virtue はラテン語 virtus(勇気・卓越性)に、フランス語 vertu も同語源に由来する。
存在哲学
being / existence / Sein
英語・ドイツ語明治中期井上哲次郎
「存」(ながらえる・のこる)と「在」(ある・いる)を組み合わせた漢語系熟語で、「そこにあり続ける」を字義とする。英語existenceはラテン語ex(外へ)+sistere(立つ)に由来し「立ち現れる・現出する」を意味する。ドイツ語Seinは動詞sein(ある・である)の名詞化で「あること」そのものを指す。
暗示哲学
suggestion
英語明治期井上哲次郎
「暗」(ほのめかす・隠す)と「示」(しめす)を組み合わせた語。古来、直接言わずそれとなく伝えることを意味する既存の漢語を、心理学的暗示概念の訳語に転用した。
意志哲学
will
英語明治期井上哲次郎
「意」(こころ・おもい)と「志」(こころざし・向かう先)を組み合わせた古典漢語。「心がある方向に向かうこと」を字義とする。
印象哲学
impression
英語明治期井上哲次郎
「印」(型・形跡)と「象」(かたち・イメージ)を組み合わせた古典漢語。「心に印のように刻まれた形」を字義とし、感覚的な知覚・影響を表す。
絶対哲学
absolute
英語・ドイツ語明治期井上哲次郎
絶(とだえる・ひき離す)と対(むかう・相対する)を組み合わせた漢語。「他との対立関係が絶たれている」という意味。
唯物論哲学
materialism / Materialismus
英語・ドイツ語明治初期井上哲次郎
「唯」は「ただ〜だけ」という限定を意味し、「物」は物質・物体、「論」は理論・学説を意味する。「物質のみを実在とする理論」という字義。materialismのmateriaはラテン語で「素材・物質」を意味する。