自然哲学nature / Natur英語・ドイツ語・フランス語明治中期「自」は「みずから・おのずから」、「然」は「そのようである状態」を意味し、合わせて「おのずからそうである」となる。老子の「無為自然」や仏教の「自然法爾(じねんほうに)」に由来する古典的概念。
美哲学beauty / das Schöne英語・ドイツ語明治期西周古漢字の会意文字。羊(大きな羊)と大(大きい)を組み合わせ、もとは「大きく肥えた羊」→「美味しい」→「美しい」という意味の変遷をたどる。古来からの漢字を哲学的概念の訳語として転用した。
思想哲学thought / Gedanke英語・ドイツ語明治期思(おもう・考える)と想(おもいえがく・想像する)を組み合わせた古典漢語。両字とも心の働きを表し、合わせて「深く考え思いめぐらすこと」を意味する。
判断哲学judgment / Urteil英語・ドイツ語明治期判(刀で分け目を入れる・決める)と断(切る・決断する)を組み合わせた古典漢語。刀で切り分けて判定するという比喩的意味を持ち、もとは仏教語として用いられた。
総合哲学synthesis / Synthese英語・ドイツ語明治期総(すべて・まとめる)と合(あわせる・一つにまとめる)を組み合わせた造語。「すべてをまとめ合わせる」という意味を持ち、ギリシャ語syntithenai(一緒に置く・結合する)の概念に対応する。
命題哲学proposition英語明治初期西周命(言いつける・題する・名づける)と題(主題・問題・テーマ)を組み合わせた造語。「言葉によって命じられた問い・主張」という意味で、論理学の命題概念を的確に表す。
原理哲学principle / Prinzip英語・ドイツ語明治期原(みなもと・根源・もと)と理(ことわり・道理・法則)を組み合わせた漢語。「物事の根源にある道理・法則」という意味で、ラテン語principium(最初の石・根本)に対応する。
手段哲学means / Mittel英語・ドイツ語明治期手(て・やり方・腕前)と段(段階・方法・やり口)を組み合わせた漢語。「手を使う作業のやり方」という字義から、目的を実現するための方法全般を指す語として定着した。
心理哲学psychology英語明治期西周心(こころ・精神・内的な働き)と理(ことわり・道理・しくみ)を組み合わせた漢語。「心のしくみと道理を研究すること」という字義で、精神・意識現象を扱う学問を指す。
哲学者哲学philosopher英語明治期西周哲(かしこい・物事の道理に通じた・賢明な)と学(まなぶ・学問)と者(もの・ひと・その道の人)を組み合わせた漢語。「道理に通じた学問を修める人」という字義で、西洋語philosopherのギリシャ語原義「知恵を愛する者」に対応する。
懊悩哲学anguish英語明治期「懊」(おう・もだえる・心が乱れる)と「悩」(のう・なやむ・苦しむ)を組み合わせた古典漢語。「心が乱れてもだえ苦しむ」という字義で、中国古典に由来する表現。英語anguishはラテン語angustia(狭さ・窮迫)に由来する。
品格哲学character英語明治初期「品」(品位・等級・人としての質)と「格」(等級・基準・品位・地位)を組み合わせた古典漢語。「人としての品位・格式・質の高さ」を字義とし、中国古典に由来する既存語を明治期の翻訳文脈に転用した。
人格哲学personality / Persönlichkeit英語・ドイツ語明治期井上哲次郎「人」(ひと・人間)と「格」(等級・資格・地位・品位)を組み合わせた漢語で、「人間としての格・品位・道徳的資格」を意味する。英語personalityはラテン語persona(仮面・役柄・人格)に、ドイツ語Persönlichkeitも同語源に由来する。
徳性哲学virtue英語・フランス語明治期井上哲次郎「徳」(道徳的な卓越性・善き品性)と「性」(生まれながらの本性・本質)を組み合わせた漢語。朱子学の『中庸』に見える「尊徳性」(徳の本性を尊ぶ)に由来し、天から賦与された道徳的本性を意味する。英語 virtue はラテン語 virtus(勇気・卓越性)に、フランス語 vertu も同語源に由来する。
存在哲学being / existence / Sein英語・ドイツ語明治中期井上哲次郎「存」(ながらえる・のこる)と「在」(ある・いる)を組み合わせた漢語系熟語で、「そこにあり続ける」を字義とする。英語existenceはラテン語ex(外へ)+sistere(立つ)に由来し「立ち現れる・現出する」を意味する。ドイツ語Seinは動詞sein(ある・である)の名詞化で「あること」そのものを指す。
暗示哲学suggestion英語明治期井上哲次郎「暗」(ほのめかす・隠す)と「示」(しめす)を組み合わせた語。古来、直接言わずそれとなく伝えることを意味する既存の漢語を、心理学的暗示概念の訳語に転用した。
唯物論哲学materialism / Materialismus英語・ドイツ語明治初期井上哲次郎「唯」は「ただ〜だけ」という限定を意味し、「物」は物質・物体、「論」は理論・学説を意味する。「物質のみを実在とする理論」という字義。materialismのmateriaはラテン語で「素材・物質」を意味する。
感性哲学sensibility / Sinnlichkeit英語・ドイツ語明治初期西周「感」は外界の刺激に反応・感じることを意味し、「性」は本質的な性質・働きを意味する。「外界に感じる本質的能力」という字義。Sinnlichkeitはドイツ語Sinn(感覚)に由来する。
時間哲学time / Zeit英語・ドイツ語明治初期「時」は時・時刻・ある時点を意味し、「間」は間・あいだ・持続を意味する。古典漢語にも「時間」の用例はあるが、近代的な哲学・物理学上の概念を担う語として再利用された。
空間哲学space / Raum英語・ドイツ語明治初期「空」は空・虚ろを意味し、「間」は間・ひろがりを意味する。「何もない広がり・虚ろな間」という字義。spaceはラテン語spatium(広がり・間隔)に由来する。
理論哲学theory英語・ドイツ語明治期「理」は道理・条理・事物の筋道を意味し、「論」は論述・議論・体系的な考察を意味する。「事物の筋道を体系的に論じたもの」という字義。theoryはギリシャ語theoria(観察・考察・思索)に由来する。
構成哲学composition / structure / constitution英語明治期「構」は組み立てること、「成」は成り立つことを意味する。要素を組んで全体を成すという字義で composition / structure に対応した。
区別哲学distinction / classification英語・フランス語明治期「区」は区切る・分けること、「別」はわけることを意味する。違いに応じて分けるという字義で distinction / classification に対応した。
理解哲学understanding / comprehension英語明治期「理」は筋道・ことわり、「解」はときほぐして分かることを意味する。物事の筋道を解き明かしてわかるという字義で understanding に対応した。
思慮哲学consideration / prudence / thought英語明治期「思」は考えること、「慮」は先々をはかることを意味する。よく考え、先を見通して配慮するという字義で prudence などに対応した。
至当哲学justifiable / proper / reasonable英語明治期「至」はこの上なく到ること、「当」はあたる・かなうことを意味する。もっとも妥当であるという字義で justifiable / proper に対応した。
官能哲学faculty英語明治初期西周「官」は感覚器官・職能・担い手を意味し、「能」は「できる・はたらき・能力」を意味する。合わせて「感覚器官の働き・心的能力」を字義とする。英語 faculty はラテン語 facultas(能力・容易さ)に由来する。
驚愕哲学astonishment英語古典漢語由来「驚」は馬+音符「敬」からなる形声字で、馬が突然驚いて跳ね上がる様を表し「おどろく」を意味する。「愕」はりっしんべん(心)+「咢」からなり、突然の衝撃に心が止まるような強い驚きを表す。両字を重ねて「ひどく驚く」の意を強調した語。
無欲哲学disinterestedness / unselfishness / desirelessness英語平安期以前「無」はないこと、「欲」はほしがる心・欲望を表す。合わせて「欲がない」「貪らない」の意。disinterestedness は interest(利害・関心)を離れた状態をいう。
万物哲学all things / all creation / universe英語・ラテン語古典漢語由来「万」は非常に多い数、「物」は存在するもの・事物を表す。合わせて「あらゆる存在」の意。universe はラテン語 universum(一つにまとめられたもの)に由来する。
心理学哲学psychology / mental philosophy英語明治初期西周「心」は精神・意識、「理」は法則・すじみち、「学」は研究を表す。psychology はギリシア語 psyche(魂・心)と logos(学)に由来する。
精神学哲学mental science / pneumatology英語明治期「精神」は心・霊的原理、「学」は研究。mental science は心的現象の学、pneumatology は霊・精神に関する学をいう。
真性哲学true nature / authenticity英語古典漢語由来・明治期「真」は本当、「性」は性質・本性。authenticity はギリシア語 authentikos(本物の)に由来する。
演繹法哲学deductive method / deduction英語明治初期西周「演」は押し広げる、「繹」は糸口から引き出すこと。「法」は方法。deduction はラテン語 deducere(導き出す)に由来する。
帰納法哲学inductive method / induction英語明治初期西周「帰納」は個々の事例をまとめて一つの結論へ帰すこと。「法」は方法。induction はラテン語 inducere(導き入れる)に由来する。
天哲学nature / the Creator英語・フランス語明治初期福沢諭吉古代中国・日本における「天」は空・宇宙・宇宙の最高道徳原理を意味し、儒教では人間の道徳の根拠として「天命」「天道」の形で用いられてきた。明治期にはこの概念が西洋自然法の「Nature(自然)」・「God(神)」の訳語的対応語として機能した。