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法律

権利・義務・裁判・契約といった、近代法の体系化に伴って定着した訳語の分野。

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井上毅2穂積陳重2
権利法律
right
英語・フランス語明治期
権(力・権力)と利(利益・利得)を組み合わせた造語。法的に保障された利益という意味を持つ。
法律法律
law
英語・フランス語明治期
法(規範・方法)と律(ルール・規則)を組み合わせた造語。いずれも規範を意味する漢字を重ねた。
憲法法律
constitution
ドイツ語明治期井上毅
憲(おきて・根本の規範)と法(規範・ルール)を組み合わせた造語。ドイツ法学の影響を強く受けた。
義務法律
duty / obligation
英語明治期
義(道義・あるべき道・正しい道)と務(つとめ・はたすべきこと)を組み合わせた漢語。「道義として果たすべき務め」という字義を持ち、道徳的・法的に課せられた責任を表す。
警察法律
police
英語・フランス語明治初期
「警」は警戒・注意することを意味し、「察」は看察・観察・推知することを意味する。「警戒してあらかじめ察する」という字義。policeの語源はギリシャ語polis(都市国家)に遡るラテン語politia(国家統治)。
越権法律
ultra vires / excès de pouvoir
ラテン語・フランス語明治期
「越」は超える・越境することを意味し、「権」は権限・権力を意味する。与えられた権限を超えるという字義。ultra viresはラテン語ultra(超えて)+vires(力の複数形、virの複数)に由来する。
慣行法律
custom / usage / pratique
英語・フランス語明治期
「慣」は慣れ親しむ・習慣を意味し、「行」は行為・行うことを意味する。習慣的に行われる行為・やり方という字義。customはラテン語consuetudo(習慣)に由来し、繰り返されることで形成される社会規範を意味する。
共用法律
common use / usage commun
英語・フランス語明治期
「共」は共同・ともにを意味し、「用」は使用・用途・利用を意味する。複数者がともに使うという字義。commonはラテン語communis(共同の・公共の)に由来し、共同体に属するものを意味する。
私権法律
private right / droit privé
英語・フランス語明治期
「私」は個人・私的・公の対義を意味し、「権」は権利・権限を意味する。個人の私的領域における権利という字義。private rightのprivateはラテン語privatus(国家から分離された・個人的な)に由来する。
上告法律
appeal / pourvoi en cassation
英語・フランス語明治期
「上」は上位・上方を意味し、「告」は告げる・申告・訴えることを意味する。上位(の裁判所)に申告する・訴えるという字義。appealはラテン語appellare(呼びかける・訴える)に由来し、ad(向かって)+pellare(駆る)が語根。
例外法律
exception / exception
英語・フランス語明治期
「例」は例・規則・慣例を意味し、「外」は外側・外れることを意味する。規則・例の外にある事例という字義。exceptionはラテン語exceptio(excipere=取り出す)に由来し、ex(外に)+capere(取る)が語根で「取り出されたもの」を原義とする。
組合法律
partnership / association
英語・フランス語明治期
「組」は人や物を組み合わせること、「合」は合わせて一つになることを意味する。もともとの「仲間・一団」の語義が、明治期に西洋の団体・共同事業体の概念を受け止める語として拡張された。
弁護法律
defense / advocacy
英語明治期
「弁」はことばでわきまえる・言い分を述べること、「護」はまもることを意味する。言論によって人を守るという字義が、近代法の defense 概念に重ねられた。
命令法律
command / order
英語明治期
「命」は言いつけ・天命・名づけること、「令」は命じることや法令を意味する。二字が重なり、権限をもつ者が相手に行為を求めることを表す。
戸籍法律
family register / family registration
英語明治初期
「戸」は家ごとの単位、「籍」は帳簿・登録を意味する。家を単位として人々を記録した帳簿という字義から、近代の family register 制度を表す語となった。
規則法律
rule / regulation
英語明治期
「規」はきまり・手本、「則」はのっとるべき法則を意味する。従うべき決まりという字義で rule / regulation に対応した。
管轄法律
jurisdiction
英語明治期
「管」はつかさどること、「轄」は車軸を押さえる金具から転じて、しめくくって掌握することを意味する。一定範囲を取り仕切ることを表す。
裁判法律
trial / judgment / adjudication
英語明治期
「裁」はさばく・処理すること、「判」は見分けて決めることを意味する。物事をさばいて是非を決めるという字義で trial / judgment に対応した。
商法法律
commercial law / mercantile law
英語明治期
「商」は商業・取引、「法」は法則・法律を意味する。商取引を規律する法律という字義で commercial law に対応した。
条理法律
principle / reason / natural justice
英語明治期
「条」は筋道・条目、「理」はことわり・道理を意味する。物事の通るべき筋道という字義で principle / reason に対応した。
説諭法律
admonition / exhortation / persuasion
英語江戸末期〜明治期
「説」はとききかせること、「諭」はさとすことを意味する。道理を分かりやすく説いて改めさせるという字義で admonition に対応した。
妨害法律
obstruction / interference
英語平安中期
「妨」はさまたげること、「害」はそこなうこと。進行や作用を邪魔し、損なうという意味を二字で強めている。
脱走法律
escape / flight / desertion
英語江戸後期
「脱」はぬけること、「走」はにげること。拘束や包囲から抜けて走り去るという動きがそのまま字義になっている。
委任法律
delegation / entrustment / mandate
英語南北朝期
「委」はゆだねること、「任」はまかせること。信頼にもとづき権限や事務を他者へ渡す意味を重ねて表す。
贋造法律
forgery / counterfeit / imitation
英語江戸後期
「贋」はにせもの、「造」はつくること。本物に似せたものを作り出すという字義をそのまま表す。
期限法律
deadline / term / time limit
英語奈良時代
「期」は約束された時、「限」は区切り。決められた時の境目までという意味を表す。
欺謀法律
deceitful scheme / fraud / trickery
英語明治初期
「欺」はあざむくこと、「謀」はたくらみ。人を欺く目的をもった計略であることを明示する。
寄留法律
temporary residence / domicile registration
英語近代
「寄」は身を寄せること、「留」はとどまること。他所に仮に住み留まる状態を表す。
窃盗法律
theft / larceny
英語奈良時代
「窃」はひそかにぬすむこと、「盗」は盗み取ること。密かに他人の物を奪う行為を強調する。
確証法律
conclusive evidence / proof
英語明治初期
「確」はたしかであること、「証」はあかし。疑いを許さない証しという意味を持つ。
確定法律
determination / settlement / fixed decision
英語明治初期
「確」はたしかであること、「定」はさだめること。揺れのない状態に決める意味を重ねる。
刑律法律
penal law / criminal code
英語鎌倉初期
「刑」はつみへの処罰、「律」は法のきまり。刑罰を定める法規をまとめて示す。
凶徒法律
villain / criminal / rebel
英語奈良時代
「凶」は邪悪・不吉、「徒」は仲間や一味。悪事をなす者どもという集団的ニュアンスを持つ。
厳譴法律
severe reprimand / stern censure
英語江戸中期
「厳」はきびしいこと、「譴」はとがめること。重く厳格な非難を加える意味を持つ。
公然法律
openly / publicly / notorious
英語江戸中期
「公」はおおやけ、「然」はそのようなありさま。私的に隠されず、公の場にあらわれている状態を示す。
讒謗法律
slander / malicious abuse / defamation
英語室町前期
「讒」は事実を曲げておとしいれること、「謗」はそしること。悪意をもって他人を傷つける言葉を重ねて示す。
事件法律
incident / case / event / matter
英語明治初期
「事」はことがら、「件」はひとつひとつの事項。ひとまとまりの出来事や事案を指す。
脱籍法律
removal from a register / withdrawal from membership
英語明治初期
「脱」はぬけること、「籍」は名を記した台帳。登録や所属から外れることを表す。
談判法律
negotiation / settlement talk
英語明治初期
「談」は話すこと、「判」はさばく・決めること。話し合いでけりをつける含みがある。
伝聞法律
hearsay / report
英語平安後期
「伝」は伝わること、「聞」は聞くこと。自分が直接見ず、人から伝わって耳に入ることを表す。
罰金法律
fine / monetary penalty
英語室町時代
「罰」は罰すること、「金」は金銭。金をもって制裁を与える意味を端的に示す。
伏罪法律
submission to punishment / acknowledging guilt
英語明治初期
「伏」は従う・ひれ伏すこと、「罪」はつみ。罪に服して身を低くする意を含む。
弁解法律
excuse / explanation / self-justification
英語不明
「弁」はわけて述べること、「解」はほどくこと。もつれた事情を言葉でほどく意。
捕亡法律
apprehension of fugitives / pursuit of criminals
英語奈良時代
「捕」はとらえること、「亡」は逃げる者。逃亡者を追捕する行為を表す。
釐正法律
revision / rectification / correction
英語江戸中期
「釐」はおさめる・ただすこと、「正」は正すこと。整序と是正を重ねる語。
版権法律
copyright
英語幕末・明治期
「版」は印刷の版木や出版を、「権」は権利を表す。書物や図版を版にして世に出す権利という理解が込められている。
適用法律
apply / application
英語明治初期
「適」はかなう・あてはまる、「用」はもちいること。apply はラテン語 applicare(近づける・あてる)に由来する。
流刑法律
exile / banishment
英語・フランス語古代法制由来・明治期
「流」は本拠から遠くへ流すこと、「刑」は刑罰を表す。exile はラテン語 exilium(追放)に由来する。
血属法律
consanguinity / blood relationship
英語明治期
「血」は血縁・血筋、「属」はつながり属することを表す。consanguinity はラテン語 con-(共に)と sanguis(血)に由来する。
配偶法律
spouse / mate / partner
英語古典漢語由来・明治期
「配」は組み合わせる・つれあわせること、「偶」は対になるものを表す。spouse はラテン語 sponsus(約束された者)に由来する。
法学法律
jurisprudence / law
英語明治期
「法」は規範・法律、「学」は研究。jurisprudence はラテン語 juris prudentia(法の知識)に由来する。
国法法律
national law / law of the state
英語明治期
「国」は国家、「法」は法律・規範。national law は国家単位で効力をもつ法をいう。
公法法律
public law
英語明治期
「公」は公共・国家、「法」は法律。public law は公的権力や公益に関する法をいう。
私法法律
private law
英語明治期
「私」は私人・私的関係、「法」は法律。private law は個人間関係に関する法をいう。
刑法法律
criminal law / penal code
英語明治期
「刑」は刑罰、「法」は法律。criminal law は犯罪と処罰に関する法をいう。
軍法法律
military law
英語明治期
「軍」は軍隊、「法」は規律・法律。military law は軍事組織に適用される法をいう。
法典法律
code / legal code
英語明治期
「法」は法律、「典」は基準となる書物。code はラテン語 codex(書冊)に由来する。
公権法律
public right / public authority
英語明治期
「公」は公共・国家、「権」は権利・権力。public right は公的関係における権利をいう。
条規法律
article / regulation
英語明治期
「条」は箇条、「規」は規則。article は法令・条約の条項をいう。
判官法律
judge / magistrate
英語古代官制由来・明治期
「判」は判断・裁くこと、「官」は官職。judge はラテン語 judex(裁く者)に由来する。
親族法律
Verwandtschaft / parenté
ドイツ語・フランス語明治期穂積陳重
「親」は近しい・縁のある者、「族」は一族・集団を意味する。古典漢語に用例を持つ語を、近代民法の技術的な法律概念として再定義した。
相続法律
Erbschaft / succession
ドイツ語・フランス語明治期穂積陳重
「相」は姿・状態、「続」は継ぎ続けること。仏教語で「前の状態を次が引き継ぐ連続」を意味し、そこから財産・地位の包括的承継を指す法律用語へと転用された。
勅令法律
Verordnung / ordinance
ドイツ語・英語明治期井上毅
「勅」は天子の発する言葉・命令を指す漢字で、律令体制に由来する語。「令」は法令・命令を意味する。古代中国の律令制から日本の律令体制に引き継がれた漢語を、近代立憲国家の行政命令概念として転用した。