文明文化civilization英語・フランス語明治期福沢諭吉「文」は文事・文化・教養を意味し、「明」は明らかにすること・啓発を意味する。儒学の古典語から転用し、civilizationの近代的意義(物質的・精神的発展)を付与した。
近代文化modern / modernity英語・フランス語・ドイツ語明治期近(近い・直近の)と代(時代・世代)を組み合わせた造語。「現在に近い時代」という意味で、西洋語 modern のラテン語語源 modo(今まさに)に相応する概念を漢字で表現した。
芸術文化art / Kunst英語・ドイツ語・フランス語明治期西周芸(わざ・技芸・才能)と術(すべ・技法・方法)を組み合わせた造語。技芸の方法・体系という意味を持ち、古典漢語の「藝」(六芸などの技能)を再転用した。
恋愛文化love / amour英語・フランス語明治中期恋(こい・慕う気持ち)と愛(いつくしむ・大切に思う)を組み合わせた造語。慕い愛するという意味で、肉体的欲望よりも精神的・感情的な絆を強調する語として創出された。
歴史文化history英語明治期歴(へる・経過する・次々と経てきた)と史(ふみ・記録・歴史家)を組み合わせた漢語。「次々と経過してきた出来事の記録」という字義で、時間の経過とともに積み重なった事象の記録・研究を指す。
文学文化literature英語明治期「文」は文字・文章・文事(文学的な事柄)を意味し、「学」は学問・学術を意味する。古典漢語の「文学」は文事の学問という意で、近代的なliteratureの概念を担う語として再利用された。
宗教文化religion英語明治期宗(みなもと・宗派・崇める対象・根本)と教(おしえ・教義・教え)を組み合わせた漢語・仏教語。「宗派の教え」という仏教的字義が、信仰・超越的存在への帰依という宗教一般を指す語に転用された。
愛文化love / agapē英語・ギリシャ語明治初期古来より漢字圏に存在した語で、「心が気にかかる・執着する・大切にする」を意味した。古代中国語では「仁愛・慈愛」の意で用いられ、仏教では渇愛(タンハー)の訳として煩悩的な意味合いも持つ。ギリシャ語 agapē は神の無償の愛を意味し、これに「愛」を当てることで語義が大きく拡張された。
写真文化photograph英語幕末〜明治初期「写」(うつす・模写する)と「真」(まこと・実物)を組み合わせた漢語で、「真実のものを写し取る」を字義とする。もと肖像画や写生画を意味し、光学的記録技術の訳語として転用された。英語photographはギリシャ語phōs(光)とgraphein(描く)に由来し「光で描く」を意味する。
美術文化fine arts / beaux-arts英語・フランス語明治初期西周「美」は美しさ・審美的価値を意味し、「術」は技術・技芸を意味する。「美を追求する技芸」という字義。fine artsのfineはラテン語finitus(完成された・洗練された)に由来する。
喜劇文化comedy英語・フランス語明治期「喜」は喜び・笑いを意味し、「劇」は演劇・劇的な演技を意味する。「喜びや笑いを扱う演劇」という字義。comedyはギリシャ語komodia(komos=宴会の祭り+oide=歌)に由来する。
悲劇文化tragedy英語・フランス語明治期「悲」は悲しみ・哀れを意味し、「劇」は演劇・劇的な演技を意味する。「悲しみや苦難を扱う演劇」という字義。tragedyはギリシャ語tragoidia(tragos=ヤギ+oide=歌)に由来し、主人公が苦難・死を迎える演劇ジャンルを指す。
珈琲文化koffie / coffeeオランダ語・英語江戸後期宇田川榕菴語源はオランダ語 koffie、さらに遡ればアラビア語 qahwa に由来する。「珈」「琲」は音を写しつつ、玉飾りのような漢字を選んで異国風の飲料を雅に表した当て字とみられる。
現代文化contemporary / modern / present age英語明治期「現」はあらわれて今ここにあること、「代」は時代・世代を意味する。字義どおり、目の前にあらわれている現在の時代を表す。
世界文化world英語明治期仏教語では梵語 lokadhātu などの訳語として、時間を表す「世」と空間・境域を表す「界」を合わせた語とされる。近代には world の訳語として地理的・社会的意味が強まった。
表現文化expression / representation英語・フランス語・ドイツ語明治期「表」は外にあらわすこと、「現」はあらわれることを意味する。内にあるものを外に現すという字義で expression に対応した。
奮発文化spirited effort / splurge / generous spending英語室町後期「奮」はふるいたつこと、「発」は起こる・起こすこと。勢いや気力を内から起こすという字義が核にある。
放蕩文化dissipation / debauchery / licentiousness英語奈良時代「放」はほしいままにすること、「蕩」はみだれること。規律を離れてふるまいが乱れるという字義から成る。
敬白文化respectfully yours / respectfully submitted英語不詳「敬」はうやまうこと、「白」は申し述べること。敬意をこめて申し上げるという文語的な結びの表現である。
巨細文化details / particulars / large and small matters英語平安中期「巨」は大きいこと、「細」はこまかいこと。大小のすべて、または詳しい仔細を合わせて示す。
在館文化being in a building / being present at an embassy or museum英語近代「在」はその場にあること、「館」は建物・公館・施設。館の中に在るという状態をそのまま示す。
口調文化tone英語明治期「口」は口・言葉を、「調」は整ったリズム・調子を意味し、「言葉を口に出す際の調子」を表す。英語 tone はギリシャ語 tonos(張り・音程)→ラテン語 tonus を経て「声の調子・話し方」を意味するようになった。
化身文化incarnation英語・サンスクリット語仏教漢訳由来・明治期「化」は姿を変えること、「身」は身体を表す。incarnation はラテン語 caro(肉)に由来し、肉体を取ることを意味する。
切手文化postage stamp / stamp英語明治初期前島密「切手」は切符手形の略とされ、一定の権利や支払いを示す証票を意味した。stamp は押印・印紙・切手を表す英語で、postage stamp は郵便料金前納証票をいう。
基督文化Christ英語・ギリシア語・ラテン語キリシタン期〜明治期「基督」は Christ の音を漢字で写した表記。Christ はギリシア語 Christos(油注がれた者)に由来し、ヘブライ語 Messiah(メシア)の訳語にあたる。
正史文化official history / authorized history英語古典漢語由来「正」は正式・正統、「史」は歴史記録を表す。official history は公的機関が編んだ、または承認した歴史をいう。
年表文化chronological table / timeline英語中世漢語由来・明治初期西周「年」は年次、「表」は項目を並べ示す表を表す。chronological はギリシア語 chronos(時間)に由来する。
万国史文化world history / universal history英語明治初期「万国」は多くの国・世界諸国、「史」は歴史を表す。world history は国境を越えた歴史過程を扱う分野をいう。
拝火教文化Zoroastrianism英語・ペルシア語明治期「拝火」は火を礼拝すること、「教」は宗教。Zoroastrianism は預言者 Zarathustra / Zoroaster に由来する。
唯一神学文化monotheism英語・ギリシア語明治期「唯一」はただ一つ、「神」は deity、「学」はここでは教説・思想を表す。monotheism は mono-(一つ)と theos(神)に由来する。
救世主文化savior / messiah英語・ヘブライ語明治期「救世」は世を救うこと、「主」は主なる者。savior は save(救う)に、messiah はヘブライ語 mashiah(油注がれた者)に由来する。
葉書文化postcard / postal card英語明治初期前島密「はしがき(端書)」が転じた語。「葉書」は当て字で、文書の端(はし)に記した短い書き付けが独立した一枚の通信文になったことに由来する。「葉」の字義(葉・ページ)と重ね合わせた可能性もある。
手紙文化letter英語近世「手」は手元・筆跡・文書を、「紙」は紙・書面を意味する。本来「手元に置いて使う紙」という実質的意味だったものが、近世に書簡・消息文の意に転じた。中国語では手元の紙=トイレ用紙の意で異なる発展を示す。
庭球文化lawn tennis英語明治期「庭」は庭園・広場を、「球」は球・球技を意味する漢字。英語lawn(芝の庭)を「庭」に、tennisの球技性を「球」に対応させた意訳。英語のtennis自体はフランス語tenez(さあ受けろ)に由来するとされる。
遊撃手文化shortstop英語明治期中馬庚「遊」は自由に動く・遊動することを、「撃」は撃つ・攻撃することを、「手」は人・競技者を意味する。軍事用語「遊軍・遊撃隊」に由来する造語で、二塁と三塁の間を守りながら広範に動く守備位置の機動性を表す。
獨乙文化Deutsch / Duitslandドイツ語・オランダ語江戸末期「獨(独)」は「どい」の音を、「乙」は「つ」の音を表す当て字。「独逸」も同義の別表記。オランダ語Duitsの短縮形を日本語音に近い漢字で写した音訳で、ドイツ語Deutschとも同源(古高ドイツ語diutisc=民衆の)。
墺地利文化Österreich / Austriaドイツ語・英語幕末・明治期「墺」は土偏をもつ当て字で、「オウ」の音を写した略字。「地利」は「ちり・たり」の音を表す。ドイツ語Österreich(オスター=東+ライヒ=国)の意味は訳語に取り込まれず、発音のみを漢字化した。
伊太利文化Italia / Italyイタリア語・英語江戸末期「伊」は「い」の音を、「太」は「た」の音を、「利」は「り」の音を表す当て字。「伊太利亜」は「ア」まで写した完全形。Italiaの語源はイタリック人の地名に由来し、意味は反映されていない純粋な音訳。
英吉利文化England / Britain英語江戸末期「英」は「えい」の音を写し光輝・優秀の意をもつ漢字、「吉利」は「ぎりす・ぎりし」の音を表す当て字。語源はポルトガル語inglez(英国人・英国の)で、戦国期の南蛮貿易を通じて伝来した。
阿蘭陀文化Holanda / Hollandポルトガル語・オランダ語江戸時代「阿蘭陀」はポルトガル語Holandaを「阿(あ)」「蘭(ら)」「陀(だ)」と音訳した当て字。「和蘭」「和蘭陀」も同義の別表記。略字「蘭」はオランダから伝来した西洋知識全体を指す象徴文字として江戸文化に定着した。
亜米利加文化America英語江戸末期「亜(あ)」「米(め・み)」「利(り)」「加(か)」の音を写す当て字。「米利堅」はAmericaのうち「meri-can」に対応する音節を漢字化したもの。「亜」は大陸・国名に接頭的に用いられた。
仏蘭西文化Franceフランス語・英語江戸末期「仏(ふつ)」は[F-]の音を、「蘭(らん)」は[-ran-]の音を、「西(す・せ)」は[-s/-ce]の音を写す当て字。Franceのf-r-a-n-c-eを仏・蘭・西の三字で音訳した中国由来の表記を日本が採用した。
西班牙文化España / Hispaniaスペイン語・ラテン語江戸時代ラテン語Hispaniaの音(ヒスパニア)を中国語で写した当て字。「西(しー)」は[his-]の音を、「班(はん)」は[-pan-]の音を、「牙(が)」は[-ia]の音を表す。スペイン語自国名Españaとは異なるラテン語形に基づく音訳。
葡萄牙文化Portugalポルトガル語安土桃山時代広東語発音でPortugalを音訳した当て字。「葡(ぽ)」は[Po-]の音を、「萄(とう)」は[-rtu-]に対応する音を、「牙(が)」は[-gal]の音を写した。「葡萄」との字形の一致は偶然で、意味とは無関係な純粋な音訳。
倫敦文化London英語幕末・明治期「倫(りん・ろん)」は[Lon-]の音を、「敦(とん・どん)」は[-don]の音を写す当て字。古代ケルト語に由来するLondonはローマ時代の「Londinium」に遡る地名で、漢字には音のみを写した。
巴里文化Parisフランス語幕末・明治期「巴(は・ぱ)」は[Pa-]の音を、「里(り)」は[-ri]の音を写す当て字。フランス語Parisはパリシイ族(Parisii)の居住地に由来する地名で、「巴」「里」の字義(うずまき・村里)は音訳に使われたにすぎない。
紐育文化New York英語明治期「紐(じゅう・にゅう)」は[New-]の音を、「育(いく)」は[-York]の音を写す当て字。中国語「紐約」の「約(ヤク)」を英語音により近い「育(イク)」に替えた日本独自の変形音訳。
伯林文化Berlinドイツ語明治期「伯(はく・べ)」は[Ber-]の音を、「林(りん)」は[-lin]の音を写す当て字。Berlinの語源はスラブ語の湿地(berl-)とする説やドイツ語の熊(Bär)に由来するとの説があるが、漢字には意味は反映されていない。
墨西哥文化Méxicoスペイン語江戸末期・明治期「墨(ぼく・め)」は[Me-]の音を、「西(し・き)」は[-xi-]の音を、「哥(か・こ)」は[-co]の音を写す当て字。「墨」はインク・墨汁を意味するが、ここでは純粋に「me」の音を写す中国語慣用の音訳字として用いられた。亜墨利加(America)の「墨」と同一用法。